2006-01-01から1年間の記事一覧

拓海広志「『それから』に寄せて」

「風上に向かって少し斜めに切り上がろうとする時の帆船の帆が描くしなやかな曲線ほどセクシーなものはない」と、僕は思っています。 そこには自然に打ち負かされず、その力を利用して何事かを成し遂げようとする人間のしたたかな意志と、自然の懐に抱かれて…

拓海広志「『モンドヴィーノ』に寄せて」

ワインの文化と歴史はヨーロッパの風土や思想、そして人々の生活と深く関わっていて、それらについて知ることはとても面白いですね。また、休日にフランスの地方を巡って小さなワイナリーやビストロを訪ね、野趣あふれる田舎料理を食べながらそこの地ワイン…

拓海広志「『パイレーツ・オブ・カリビアン』に寄せて」

大人も子供も一緒になって底抜けに楽しめるエンターテーメント映画としてお薦め! ジョ二ー・デップが演じる伝説の海賊ジャック・スパロウは偉大な船長であり、海の男です。でも、口八丁手八丁の詐欺師的なところもあれば、怠惰でだらしないところもあるし、…

拓海広志「『シェエラザード』に寄せて」

太平洋戦争の結果として日本の商船隊が保有していた船は500トン以上のクラスで2,259隻が失われ、35,092人の船員の命が奪われました。支那事変からの8年間で見ると戦没船員の数は60,331人になります。 当時の日本人船員の死亡率は陸海軍人の死亡率を遥かに上…

拓海広志「吉本隆明初期3部作」

『言語にとって美とはなにか』 学生時代に熊野の本宮から小雲取、大雲取を越えて那智へ抜ける道、つまり中辺路を初めて歩いた時のことです。鬱蒼と続く杉林をひたすら歩いて峠を越えると、いきなり眼前に真っ青な太平洋が広がっていました。それを見た僕はも…

拓海広志「加山雄三 with 大友直人」

加山雄三(弾厚作)さんが日本の音楽界に与えた影響が一般に知られているよりも大きいことは、多くのミュージシャンの言動からうかがい知ることができます。 クラシック、ロック、カントリー&ウェスタン、ハワイアン、ラテン、ジャズ、フォーク、演歌などと…

拓海広志「『スクール・ウォーズ』に寄せて」

映画『スクール・ウォーズ HERO』は青春スポーツものの典型といってもよい作品なのですが、それが実話をベースにしていると知ったときに受けた感動を僕は忘れることができません。そして、この作品の美しさは、その物語を伝えようとする人たちの熱い思いに由…

拓海広志「『死生観の誕生』に寄せて」

日本語の「自然」には「ジネン」「シゼン」という二通りの読みがありますが、中世において前者は「自ずからそのようにあらしめること」(必然)を意味し、後者は「まさかのこと」「万一のこと」(偶然)を意味していたと言います。 中世日本の「ジネン」思想…

拓海広志「『A Friend in Need』に寄せて」

サマセット・モームは僕の好きな作家の一人ですが、モームのショート・ストーリーを集めたペンギンのペーパーバック『Collected Short Stories』は午後のカフェで読むにはもってこいの本です。 この中に神戸の塩屋〜垂水界隈を舞台にした『A Friend in Need…

拓海広志「田中美津さんの新著」

田中美津さんと初めてお会いしたのは、僕たちが8年ほど前に「TSとTGを支える人々の会」(HPは下記)の人たちと共に茅ヶ崎で催した性同一性障害について考えるシンポジウム&交流会の場(主催:アルバトロス・クラブ)でした。 「嫌いな男に胸を触られたらセ…

拓海広志「スポーツ大好き!」

僕の家はちょうど東六甲の登山口に位置しているので、休日に家にいるときは六甲〜北山〜甲山の山道をブラブラと散策するか、ジョギングすることが多いです。また、自転車で西宮・芦屋浜まで出かけ、そこからカヤックで漕ぎ出したり、モーターボートでクルー…

拓海広志「『永遠の語らい』に寄せて」

マノエル・ド・オリヴェイラ監督の『永遠の語らい』は、なんとも苦い後味の残る映画です。 ポルト、マルセイユ、ポンペイ、アテネ、イスタンブール、そしてカイロからスエズ運河を経てアデンへ・・・。歴史学教授の母と幼い娘による地中海の船旅は淡々と続き…

拓海広志「メリー・クリスマス!」

「メリー・クリスマス!」−−−12月に入ると欧米人と会ったり、電話で会話をした後の、お別れの挨拶に必ずこの言葉が加わりますね。 今年の日本の秋は妙に生暖かく、クリスマスなんて来ないような気がしていたのですが、最近ようやく少し涼しくなってきたの…

拓海広志「久高島にて」

何年か前に沖縄県庁で離島の介護問題について考えるシンポジウムが催され(沖縄県立看護大学と沖縄県の共催)、僕もパネル・ディスカッションのパネラーとしてそこに招いていただきました。 昔から沖縄の離島は医師不足が悩みなのですが、看護師たちはそうい…

拓海広志「『青空がぼくの家』に寄せて」

インドネシア映画の名作と言えば、僕はやはりこの作品のことを思います。『青空がぼくの家』(1989年)はスラメット・ラハルジョ・ジャロット監督の作品で、名女優クリスティン・ハキムも制作に加わっています。学校へ行くことができず廃品回収などをし…

拓海広志「続・堕落論」

もし「現在」というものに真っ向から対峙したいと思うのならば、僕たちにはたぶん健康な精神が必要になるだろう。 でも、健康な精神とはいったい何なのか? 僕は、そこにデカダンスとニヒリズムをはらみつつ、それらを克服してきた精神に対して健康さを感じ…

拓海広志「小さなガメラ」

今年公開された映画『小さき勇者たち〜ガメラ〜』は、これまでのガメラ・シリーズと違って、志摩半島沖の小島に産み落とされたガメラの卵が孵化し、それを拾った少年によって育てられるというファンタジーとして物語が始まります。 少年は幼いときに母親を失…

拓海広志「エアライン」

僕はいつも仕事と趣味で色々なところを旅しているため、飛行機に乗る機会がかなり多いです。利用するエアラインの種類も行く先によって多種多様なのですが、特にヨーロッパへはLH、アメリカへはUA、東南アジアへはSQ、TG、中国・香港へはNH(ANA)を、また日…

拓海広志「テロに対するプリンシプル」

数年前に、僕の当時の上司でもあり、個人的に親しい友人でもあった英国人の男がバリ島を襲った爆弾テロで亡くなりました。その時に抱いた激しい怒りと深い悲しみは今でも僕の胸中にありますが、その後も世界各地で大小様々な規模の理不尽な無差別テロ事件が…

拓海広志「妖怪考」

一人旅が好きで、昔から暇さえあればリュックに旅道具と寝袋を詰め込んで出かける。汽車に乗って気の向いた駅で降りて街をぶらついたり、カヤックで川下りをして夕方になると河原にテントを張ったりといった具合だ。 夜、人気のないところで風の音や虫の声を…

拓海広志『Raindrops...』♪

中学生のときにギターとウクレレを覚えると、それを使って自分で曲を作ったり、それに詞を付けたりするようになりました。これまでに僕が作った曲は200ほどになるのですが、時には仲間が作った曲に詞を付けたり、お遊びでスタンダード曲に勝手に詞を付けたり…

拓海広志「チェスゲーム」

僕が中学生の頃、『宇宙大作戦』という日本語タイトルで『スタートレック』のテレビ版が深夜に放映されていました。僕はいつも独りでテレビの画面を見入りながら、カーク船長、スポック副長、マッコイ船医らのやりとりを楽しんだものです。 論理性を尊重する…

拓海広志「日本ハム、おめでとう!」

日本ハム優勝、おめでとう! 新庄効果だけがその理由ではないのでしょうが、日本ハムは本当に気持ちの良いチーム、愛されるチーム、そして強いチームになりましたね。僕はセリーグは阪神、パリーグはソフトバンクのファンなのですが、今年は新庄選手の引退シ…

拓海広志「子どもたちの生命と魂」

自分の子どもを虐待する人は、かつて自分自身が親から虐待されて育った体験を持つケースが多いと言われています。僕は人の心の問題を全てそういう「物語」にはめ込んで安易に理解したつもりになるのは危険だと思いますが、人間の対人関係の基本が子どもの頃…

拓海広志「旅の効能」

僕は中学生のときに歴史学や民族学に興味を持ち、史跡や寺社などを訪ねて近畿各地を旅するようになったのですが、高校生になるとその行動半径は拡がり、気がついたら20歳になるまでに日本の全都道府県を巡っていました。当時の旅は鉄道やバス、船を乗り継…

拓海広志「帰ってきたウルトラ兄弟!」

映画『ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟』を観に行き、幼い頃のヒーロー達との久々の再会に僕は思わず身震いしてしまいました(!)。20年前にヤプールの怨念超獣を神戸沖の海に封じ込めたウルトラマン、セブン、ジャック、エースの4兄弟は、その激し…