拓海広志「帰ってきたウルトラ兄弟!」

 映画『ウルトラマンメビウスウルトラ兄弟』を観に行き、幼い頃のヒーロー達との久々の再会に僕は思わず身震いしてしまいました(!)。20年前にヤプールの怨念超獣を神戸沖の海に封じ込めたウルトラマン、セブン、ジャック、エースの4兄弟は、その激しい闘いの末に変身能力を失ってしまったのですが、怨念超獣を封じた結界を監視するために神戸の地でごく普通の人間の男として生きてきたという設定には泣けてきます。と言うことは、彼らも生身の人間としてあの震災を体験したわけですね。。。


 この映画は全て神戸が舞台なので、神戸っ子の僕としては素直に嬉しかったです。ただし、エキストラの人たちが使う関西弁は大阪っぽくて、神戸弁には聞こえなかったですが(笑)。主なロケ地は神戸空港を含むポートアイランドの各所と神戸港、観光船『コンチェルト』、須磨海浜水族園、六甲山牧場、布引ハーブ園、舞子ビラ、北野町などといった観光名所的な場所ばかりでしたが、個人的にはもう少し神戸の生活感が出る場所もロケ地に加えてほしかったです。


 さて、ゾフィー、タロウの教えを受けて地球にやってきたメビウスですが、まだ人間との心の通わせ方がわからず、とまどいの日々です。そこに襲い掛かる悪の宇宙人連合たち。メビウスの危機を見かねて、死を覚悟の上で最後の変身をする4兄弟ですが、彼らには激しい闘いを続ける体力はもう残されていません。そして、ついにヤプールの怨念超獣が封印を破り復活を果たします。しかし、その危機を救うために宇宙の彼方からゾフィーとタロウが飛来します。ウルトラ兄弟は血のつながった兄弟ではないのですが、彼らには血よりも濃いつながりがあるんですね。


 ウルトラマンシリーズの魅力は、正義のスーパーヒーローであるウルトラマンたちが等身大の人間として悩んだり傷ついたりしながら人間たちと交流し、怪獣や異星人たちと戦っていくことです。彼らは時としてその闘いに対して心に迷いを抱くこともあり、必ずしも単純な勧善懲悪物語とはなっていないところが、それを観る子供たちの心にも響くのでしょう。そして、そうした中でもかつての『ウルトラセブン』は特にストーリーの質が高かったように僕は思います。


 映画のエンディングでは、メビウスの活躍と成長を見守るウルトラファミリーが舞子ビラに終結して、ほのぼのとしたパーティーが催されます。これには思いっきり笑いましたが、ウルトラマンシリーズを愛する円谷プロのスタッフや俳優さんたちの思いが伝わってきてよかったです。それにしても、ハヤタ、モロボシダン、郷秀樹、北斗星司・・・、みんな素敵なおじいちゃんになっていたので、夢が壊れなくて何となく安心しました(笑)。また、氷川きよしさんの歌うテーマ曲も良かったです。


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