拓海広志「小さなガメラ」
今年公開された映画『小さき勇者たち〜ガメラ〜』は、これまでのガメラ・シリーズと違って、志摩半島沖の小島に産み落とされたガメラの卵が孵化し、それを拾った少年によって育てられるというファンタジーとして物語が始まります。
少年は幼いときに母親を失っており、食堂を経営する父親との二人暮らしを送っているのですが、彼のペットとなった赤ちゃんガメラ「トト」との交流はその寂しさを埋めると同時に、少年の中に「誰かを守ろうとする心」を芽生えさせることによって、その精神的自立を促していきます。
この映画の舞台となった大王の町や相差の浜は僕が過去に何度も足を運んでいるところで、セットとして使われていた料理店や真珠店、漁港の脇で干物を作っているところなど、全部見覚えのある風景でした。さらに志摩名物でもあるおばあちゃんの手押し車も登場して、なんだかとても嬉しかったです。
ただ、志摩が舞台なのに、登場する子供たちの家族が都会的に核家族なのはどうしてだろうと、少し疑問に思いました。昔アラフラ海に真珠を採りに行ったことのあるおじいちゃんや、現役海女のおばあちゃんなんかが登場すればもっと志摩らしくなるし、映画のストーリーも膨らんだかも知れません。
やがて大きく成長したトトは少年の前から姿を消してしまうのですが、その後志摩を襲い、伊勢湾から名古屋に上陸した怪獣ジーダスと闘うために、「ガメラ」として少年たちの前に再び姿を現します。
ジーダスとの闘いでガメラはピンチに陥るのですが、それを救うために命のリレーをする子供たち。ガメラは昔から子供たちとだけ心を通わせることのできる怪獣でしたが、それは今もまだ変わっておらず、現代の子供たちもまたそのことを知っていたようです。
少年少女らとトトの交流は志摩の海の大らかさを思わせますし、とてもほのぼのとしていて良かったです。生き物を育てることによって子供の心が成長していくというのは、いつの時代のどんな場所でも同じなんでしょうね。たとえ、それが怪獣であったとしても。。。
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