2007-01-01から1ヶ月間の記事一覧

拓海広志「メロディがやって来る時」

先週アムステルダムにいた時に突然友人から電話が掛かってきて、「今度結婚することになったので、僕たちのために曲を作ってください」と頼まれました。そこで僕は週末を過ごしたパリでセーヌ河畔を散歩しながら曲を作ったのですが、すぐに素敵なメロディが…

拓海広志「『グラン・ブルー』に寄せて」

フリーダイバーのジャック・マイヨールとエンゾ・モリナーリを巡る友情と挑戦のドラマ。少年期を共に海で過ごした二人は、ひょんなことから巡り会い、再び海で競い合う関係になります。 しかし、深海環境への適応性において、ジャックは特異体質と言ってもよ…

拓海広志「『マスター&コマンダー』に寄せて」

サンディエゴの港で、この映画のロケ用に作られた船「サプライズ」を見学したことがあります。船内に入ってみると何もかもが張りぼてだったのですが、それをうまく使ってこれだけリアルで迫力のある映像が作れるのだから大したものです。 この映画で描かれて…

拓海広志「『老人と海』に寄せて」

マイアミから車を飛ばし、キーウェストを訪ねたことがあります。かつてヘミングウェイが愛した島はすっかり観光地と化し、彼が毎日のように通ったというSloppy Joe's Barも大勢の観光客で深夜まで騒々しかったですが、フロリダ海峡の水の青さだけはたぶん当…

拓海広志「『海の上のピアニスト』に寄せて」

船を舞台とする映画の中でも僕が特に偏愛する作品です。アレッサンドロ・バリッコの原作(一人芝居の戯曲)も面白かったですが、映画はそれに基づきつつも、全く別のテイストに仕上がっています。 19世紀から20世紀にかけては多くの客船がヨーロッパとアメリ…

拓海広志「『ドラマティック・ライヴ』に寄せて」

押尾コータローはCDよりもDVDで、DVDよりも生音で・・・、これはもはや常識です! 多少なりともギターをかじった人であれば、その卓越した独奏技術は自分の目でも確認したいでしょうから、CDよりもDVDで。。。 でも、押尾さんの演奏の素晴らしさはただテクニ…

拓海広志「『子どものアトピー診察室』に寄せて」 

書店へ行くとアトピーについて書かれた本の種類の多さに驚かされることがあります。試みに頁をめくってみると、「これで必ず治る!」というふうに断定調で書かれた本の多くは言わば民間療法的な内容で、怪しそうなものも多い。 でも、医師が書いたものの多く…

拓海広志「『古都逍遥』に寄せて」 

都はるみさんの演歌はしみじみと泣けてくるんだけれど、決して狭いところに落ち込まないのがいいですね。むしろ、その歌声にはすっと世界のどこか広い場所に突き抜けていくような爽快さを感じます。だから、僕は船に乗って海に出ると、ついはるみさんの歌を…

拓海広志「『行とは何か』に寄せて」 

本書に登場する小林栄茂師は比叡山の千日回峰行を成し遂げられた方ですが、筆者である藤田庄市氏のインタビューに答えて「修行はすればするほど、悟りから遠くなります」と語っておられます。 荒行によって肉体を酷使したあげくに見る幻覚や、陶酔状態の中で…

拓海広志「『善悪の彼岸』&『道徳の系譜』に寄せて」 

学生時代にニーチェの『善悪の彼岸』と『道徳の系譜』を読んだ時に、僕の心に残ったアフォリズムを幾つか抜粋してみます。 「いたわりつつ殺す手を見たことのない者は、人生を厳しく見た人ではない」 「道徳的現象なるものは存在しない。あるのはただ、現象…

拓海広志「『山びとの動物誌』に寄せて」 

宇江敏勝さんの数ある随筆集の中でも、僕が一番愛読しており、親しい友人のお子さんが読書適齢期になると送らせていただいているのがこの本です。 宇江さんは熊野の山々を転々と移動しながら生活する炭焼きの子として生まれましたが、その後林業関係の様々な…

拓海広志「『13のエロチカ』に寄せて」

男性の性は時空を越えて飛翔しているように見えても、実は卑小な想像力の表層に由来しますが、女性の性は身体の奥深くで異次元とつながっているような気がします。 でも、それもまた男性が勝手に抱くファンタジーなのかも知れず、実は女性の性もその想像力に…

拓海広志「『エルヴィス・カントリー』に寄せて」 

南部育ちの白人であるエルヴィスの音楽的ルーツとしてカントリーとブルースがあったことはよく知られていますが、これは彼が個人的に好きだったというカントリーソングばかりを集めた名盤です。 かつてエルヴィスのレコードを擦り切れるほど聞いていた僕です…

拓海広志『「イントゥルーダー」に寄せて』

高嶋哲夫さんの小説と教育・学校問題についての論稿は一通り読んでいるのですが、「どれか一作を」ということになると、僕はサントリーミステリー大賞・読者賞の受賞作『イントゥルーダー』を挙げます。 かつて原子力の研究者であった高嶋さんには、科学や技…

拓海広志「『無常の構造』に寄せて」

日本人の自然観や社会観を語る上で見落とすことができないものとして、無常観をあげることができます。 磯部忠正氏は、自然を宇宙の生命リズムとして読みとり、それに合わせて生きるべきだとする日本古来の思想が無常観の根底にあると語ります。 この思想に…

拓海広志「『闘論2000年の埋葬』に寄せて」

『闘論2000年の埋葬』は栗本慎一郎氏と田原総一郎氏の対談ですが、この中で栗本氏は、天皇制は古代に対立していた縄文勢力と弥生勢力の妥協の産物であり、渡来人である弥生人は縄文の首長をそのまま天皇として奉りつつ、統治システムは自分たちが持ち込んだ…

拓海広志「『ウクレレウルトラマン』に寄せて」

『ウルトラQメインタイトル』から『ウルトラマンの歌』『特捜隊の歌』へと続くオープニングで、僕らは一気に「ウクレレウルトラマン」の世界に引き込まれてしまいます。 編曲、演奏共に『Ultra Seven』『ウルトラマンエース』『ウルトラマンタロウ』が特に…

拓海広志「『共同研究「冷戦以後」』に寄せて」 

中曽根康弘、村上泰亮、佐藤誠三郎、西部邁氏の共著『共同研究「冷戦以後」』には、「伝統を保守するということは、慣習の中に堆積されている過去、現在、未来の間の集団的な平衡感覚を参照するということだ」という考え方が示されています。 そこに「他集団…

拓海広志「『おれがあいつであいつがおれで』に寄せて」 

『おれがあいつであいつがおれで』は男の子と女の子が入れ替わるという『とりかへばや物語』の現代版、NHKのドラマ『どっちがどっち』の原作です。 お互いの身体が入れ替わることによって、二人は徐々により深く相手のことを理解するようになりますが、そ…

拓海広志「『クジラは昔陸を歩いていた』に寄せて」 

『クジラは昔陸を歩いていた』の著者・大隅清治さんによると、クジラの起源は白亜紀末(約6500万年前)の古地中海南西部に注ぐ川の河口部に生息していたメソニックスと呼ばれる肉食性哺乳類にたどり着くそうです。 メソニックスはネズミ程度の大きさの動…

拓海広志「『生命を捉えなおす』に寄せて」

新年明けましておめでとうございます。 昨年はこのブログを読んでいただき、ありがとうございました。 2007年が皆さんにとって良い年となるよう、心からお祈りしています。 今年もお付き合いのほど、よろしくお願い申し上げます。 * * * * * 先ほど…