2007-02-01から1ヶ月間の記事一覧

拓海広志「『小泉の勝利 メディアの敗北』に寄せて」

『小泉の勝利 メディアの敗北』−事実がこの書名の通りであったことを国民の多くは認識していますが、それを真摯に検証しようというメディア側の作業はこれまでほとんど行われてきませんでした。そんな中で、自らの過去の記事を再掲し、何故自分が小泉政治を…

拓海広志「『遺伝子工学の現状と未来』に寄せて」

遺伝子工学が世間の脚光を浴びるようになったのはかなり前のことですが、昭和57年に出版された『遺伝子工学の現状と未来―アメリカ合衆国議会特別調査』を読み直してみました。その中で、植物の遺伝資源取り扱いにおける問題点として指摘されていた以下の点は…

拓海広志「『柳に風』に寄せて」

古田新太さんの『柳に風』は、実に楽しいコラム集でした。僕は「劇団☆新感線」デビュー前からの古田ファンなので、この本に書かれていた神戸時代の思い出話や大阪時代の逸話を読んで、懐かしさのあまりとても嬉しくなりました。でも、それ以上に嬉しかったの…

拓海広志「『隠国』に寄せて」

歌人であると同時にパステル画家でもある小黒世茂さんの歌は、鮮やかな色彩の表現に満ちています。そんな言葉の躍動に誘われるまま、僕たちは隠国・熊野へと分け入り、やがてその果てに広がる海原の彼方に補陀落をも幻視するのです。『隠国』は味わい深い歌…

拓海広志「劇団鹿殺し」

以前西宮をベースに関西で活躍していた劇団鹿殺しも、2年前に東京にベースを移して以来、徐々に全国区へと成長を遂げてきました。そんな彼らが神戸新開地の小劇場で『僕を愛ちて。』という芝居をやるというので、観てきました。 亡くなった母への追慕と父へ…

拓海広志「『プロデューサーズ』に寄せて」

これは僕がニューヨークへ行く度に観たいと思いつつ、なかなか願いが叶わなかった作品なのですが、遂に映画で登場してくれました。 どーしようもないくらい俗っぽい表現とくだらない駄洒落、そしてブラックな差別ネタや下ネタが満載のちょっとやばい作品なの…

拓海広志「『SHIMADAS』に寄せて」

日本離島センターが編集・発行している『SHIMADAS』は、日本の島ガイドの決定版と言って間違いないでしょう。 本書には、日本の850離島についての所在地、面積、標高、世帯数、平均年齢、産業、来島者数、交通、窓口、地図といった基本データから、島の暮ら…

拓海広志「『力道山』に寄せて」

かつて日本のプロレスが持っていた魅力を一言で言うと、社会の表通りをうまく歩めなかった男たちのコンプレックスに満ちた情念がリング上で発散され、やがてマーシャル・アーツを超えた人間ドラマへと昇華されていたところにあったのだろうと思います。 肩を…

拓海広志「『スンダ・過ぎし日の夢』に寄せて」

『スンダ・過ぎし日の夢』は、インドネシアを代表する作家アイプ・ロシディさんの短編小説集です。本書所収の『山羊』は1959年に発表された作品ですが、当時のインドネシアは独立してからまだ十数年しか経っておらず、ジャカルタもまだ現在のような大都会に…

拓海広志「『東京タワー−オカンとボクと、時々、オトン』に寄せて」

リリー・フランキーさんの『東京タワー−オカンとボクと、時々、オトン』はとても心地よいリズムを持った文体の小説で、内容的にもかなり面白いです。リリーさんは僕と同世代の人なので小説の背景となった時代に対する感覚が似ており、僕はその分余計に感情移…

拓海広志「『地下鉄に乗って』に寄せて」

浅田次郎さんの原作を読んでから観た映画ですが、原作に負けない、なかなか味のある作品に仕上がっていたと思います。 強権的なエゴイストである父を憎んで家を飛び出した男は、自分の中に父の性質と相通ずるものがあることを薄々感じつつも、それを否定しな…

拓海広志「『おもちゃ』に寄せて」

この小説を読み進むにつれて各場面の様子が活き活きと目に浮かんでくるのは、深作欣二監督による映画『おもちゃ』(脚本:新藤兼人)を先に観てしまったせいもあるのでしょうが、それ以上に会話が多く小気味の良い新藤さんの文体によるのでしょう。 『おもち…