2006-11-01から1ヶ月間の記事一覧

拓海広志「『熊野山海民俗考』に寄せて」

熊野の海、川、山、人、食に惹かれ、僕は学生時代から今日に至るまでの間に数え切れぬほどの回数、紀伊半島の各地を訪ねてきました。そんな僕がイチオシの熊野本です。 「死者の国」として知られる熊野を日常の生活の場としてきた住民たちの自然観や、それに…

拓海広志「『環境戦略のすすめ』に寄せて」

環境問題は今日様々な場面で取り上げられますが、それを論ずる人の立場や考え方も多種多様で、正に百家争鳴状態だといえます。 人が環境を論ずるときに拠り所となる環境思想は古代から存在しました。しかし、「自然を克服すること」を是とする西欧的な近代思…

拓海広志「『星の航海術をもとめて』に寄せて」

航海術の基本は、「船の位置を求めること」と「船の向かう進路を求めること」という、空間認知にあります。まだ海図や航海計器のなかった時代の航海者たちの心には何らかのイメージマップがあり、彼らは天体、風、風浪とうねり、潮海流、海水の色、鳥や魚、…

拓海広志「『目を閉じて抱いて』に寄せて」

両性具有は完璧な人間の象徴です。洋の東西と時代を問わず、物語の中での両性具有者はその神秘性と越境性故に聖なる存在として描かれてきました。しかし、現実には多くの社会、時代において、半陰陽の人たちは何らかの差別を受けてきました。 内田春菊さんの…

拓海広志「『喜びも悲しみも幾歳月』に寄せて」

つい先ごろ、女島に残されていた日本最後の有人灯台がついに無人化されましたが、かつて灯台はそこで生活しながら灯りを守る灯台職員たちの不屈の努力によって保たれてきました。 灯台は往々にして辺鄙な岬の突端や崖の上、無人島などに位置していますので、…

拓海広志「ジプシー・キングス」

ジプシーの聖地・南仏のサント・マリー・ド・ラ・メールを訪ねたことがあるのですが、街のカフェやレストランの軒先でジプシーたちがギターをかき鳴らしながら歌っていた歌の中には、彼らのアルバムに収められている曲がたくさんありました。 今でも東欧あた…

拓海広志「『それから』に寄せて」

「風上に向かって少し斜めに切り上がろうとする時の帆船の帆が描くしなやかな曲線ほどセクシーなものはない」と、僕は思っています。 そこには自然に打ち負かされず、その力を利用して何事かを成し遂げようとする人間のしたたかな意志と、自然の懐に抱かれて…

拓海広志「『モンドヴィーノ』に寄せて」

ワインの文化と歴史はヨーロッパの風土や思想、そして人々の生活と深く関わっていて、それらについて知ることはとても面白いですね。また、休日にフランスの地方を巡って小さなワイナリーやビストロを訪ね、野趣あふれる田舎料理を食べながらそこの地ワイン…

拓海広志「『パイレーツ・オブ・カリビアン』に寄せて」

大人も子供も一緒になって底抜けに楽しめるエンターテーメント映画としてお薦め! ジョ二ー・デップが演じる伝説の海賊ジャック・スパロウは偉大な船長であり、海の男です。でも、口八丁手八丁の詐欺師的なところもあれば、怠惰でだらしないところもあるし、…

拓海広志「『シェエラザード』に寄せて」

太平洋戦争の結果として日本の商船隊が保有していた船は500トン以上のクラスで2,259隻が失われ、35,092人の船員の命が奪われました。支那事変からの8年間で見ると戦没船員の数は60,331人になります。 当時の日本人船員の死亡率は陸海軍人の死亡率を遥かに上…

拓海広志「吉本隆明初期3部作」

『言語にとって美とはなにか』 学生時代に熊野の本宮から小雲取、大雲取を越えて那智へ抜ける道、つまり中辺路を初めて歩いた時のことです。鬱蒼と続く杉林をひたすら歩いて峠を越えると、いきなり眼前に真っ青な太平洋が広がっていました。それを見た僕はも…

拓海広志「加山雄三 with 大友直人」

加山雄三(弾厚作)さんが日本の音楽界に与えた影響が一般に知られているよりも大きいことは、多くのミュージシャンの言動からうかがい知ることができます。 クラシック、ロック、カントリー&ウェスタン、ハワイアン、ラテン、ジャズ、フォーク、演歌などと…

拓海広志「『スクール・ウォーズ』に寄せて」

映画『スクール・ウォーズ HERO』は青春スポーツものの典型といってもよい作品なのですが、それが実話をベースにしていると知ったときに受けた感動を僕は忘れることができません。そして、この作品の美しさは、その物語を伝えようとする人たちの熱い思いに由…

拓海広志「『死生観の誕生』に寄せて」

日本語の「自然」には「ジネン」「シゼン」という二通りの読みがありますが、中世において前者は「自ずからそのようにあらしめること」(必然)を意味し、後者は「まさかのこと」「万一のこと」(偶然)を意味していたと言います。 中世日本の「ジネン」思想…

拓海広志「『A Friend in Need』に寄せて」

サマセット・モームは僕の好きな作家の一人ですが、モームのショート・ストーリーを集めたペンギンのペーパーバック『Collected Short Stories』は午後のカフェで読むにはもってこいの本です。 この中に神戸の塩屋〜垂水界隈を舞台にした『A Friend in Need…

拓海広志「田中美津さんの新著」

田中美津さんと初めてお会いしたのは、僕たちが8年ほど前に「TSとTGを支える人々の会」(HPは下記)の人たちと共に茅ヶ崎で催した性同一性障害について考えるシンポジウム&交流会の場(主催:アルバトロス・クラブ)でした。 「嫌いな男に胸を触られたらセ…

拓海広志「スポーツ大好き!」

僕の家はちょうど東六甲の登山口に位置しているので、休日に家にいるときは六甲〜北山〜甲山の山道をブラブラと散策するか、ジョギングすることが多いです。また、自転車で西宮・芦屋浜まで出かけ、そこからカヤックで漕ぎ出したり、モーターボートでクルー…

拓海広志「『永遠の語らい』に寄せて」

マノエル・ド・オリヴェイラ監督の『永遠の語らい』は、なんとも苦い後味の残る映画です。 ポルト、マルセイユ、ポンペイ、アテネ、イスタンブール、そしてカイロからスエズ運河を経てアデンへ・・・。歴史学教授の母と幼い娘による地中海の船旅は淡々と続き…

拓海広志「メリー・クリスマス!」

「メリー・クリスマス!」−−−12月に入ると欧米人と会ったり、電話で会話をした後の、お別れの挨拶に必ずこの言葉が加わりますね。 今年の日本の秋は妙に生暖かく、クリスマスなんて来ないような気がしていたのですが、最近ようやく少し涼しくなってきたの…

拓海広志「久高島にて」

何年か前に沖縄県庁で離島の介護問題について考えるシンポジウムが催され(沖縄県立看護大学と沖縄県の共催)、僕もパネル・ディスカッションのパネラーとしてそこに招いていただきました。 昔から沖縄の離島は医師不足が悩みなのですが、看護師たちはそうい…

拓海広志「『青空がぼくの家』に寄せて」

インドネシア映画の名作と言えば、僕はやはりこの作品のことを思います。『青空がぼくの家』(1989年)はスラメット・ラハルジョ・ジャロット監督の作品で、名女優クリスティン・ハキムも制作に加わっています。学校へ行くことができず廃品回収などをし…

拓海広志「続・堕落論」

もし「現在」というものに真っ向から対峙したいと思うのならば、僕たちにはたぶん健康な精神が必要になるだろう。 でも、健康な精神とはいったい何なのか? 僕は、そこにデカダンスとニヒリズムをはらみつつ、それらを克服してきた精神に対して健康さを感じ…

拓海広志「小さなガメラ」

今年公開された映画『小さき勇者たち〜ガメラ〜』は、これまでのガメラ・シリーズと違って、志摩半島沖の小島に産み落とされたガメラの卵が孵化し、それを拾った少年によって育てられるというファンタジーとして物語が始まります。 少年は幼いときに母親を失…

拓海広志「エアライン」

僕はいつも仕事と趣味で色々なところを旅しているため、飛行機に乗る機会がかなり多いです。利用するエアラインの種類も行く先によって多種多様なのですが、特にヨーロッパへはLH、アメリカへはUA、東南アジアへはSQ、TG、中国・香港へはNH(ANA)を、また日…