拓海広志「『それから』に寄せて」

 「風上に向かって少し斜めに切り上がろうとする時の帆船の帆が描くしなやかな曲線ほどセクシーなものはない」と、僕は思っています。


 そこには自然に打ち負かされず、その力を利用して何事かを成し遂げようとする人間のしたたかな意志と、自然の懐に抱かれてそれと調和しなければ何事をも成し得ないことを知っている人間の謙虚さが同時に表現されています。


 帆の持つセクシーな美しさとは、たぶんそれが自然と人間がギリギリの線で調和を保っているというスリリングな関係のあり方を象徴していることによるのでしょう。


 本書はそんな帆の美しさに迫ろうとする人の一人・高橋素晴さんが中学生時代にヨットで太平洋を横断した際の航海記であり、またその後の人生について書いたもので、読み応えがあります。


 ちなみに、本書には僕が寄稿した文章も掲載されていますので、よかったら読んでみてください(笑)。


 ※関連記事
 拓海広志『アジア四方海話(6)』
 拓海広志『素晴の「帆」に思いを込めて・・・』

 

(無断での転載・引用はご遠慮ください)


Link to AMAZON『それから−14歳太平洋単独横断』

それから―14歳太平洋単独横断

それから―14歳太平洋単独横断