拓海広志「『モンドヴィーノ』に寄せて」

 ワインの文化と歴史はヨーロッパの風土や思想、そして人々の生活と深く関わっていて、それらについて知ることはとても面白いですね。また、休日にフランスの地方を巡って小さなワイナリーやビストロを訪ね、野趣あふれる田舎料理を食べながらそこの地ワインを飲むのも、ワイン好きの旅人にとっては大きな楽しみの一つです。


 しかし、最近のワインのトレンドを十数年前のそれと比較すると、新世界ワインの台頭と味の平準化の勢いは凄まじいです。特に僕らが普段飲みに使う価格的に手頃なワインにはその傾向が強いように思います。そして、最近明らかに増えている、人工的な着色と着香が施されたワインたち。


 世界中のワイン市場に大きな影響を与えるワイン評論家。その嗜好に合ったワインを作らせるべく世界各地のワイナリーを指導する醸造コンサルタント。彼らを利用しながらワインビジネスを伸ばす人々と、彼らに反発しながらあくまでもテロワールにこだわったワイン造りを続ける人々。また、新しいライフスタイルやファッションの中で新たなワインの位置付けを模索する人々…。


 こうした様々な立場の人々へのインタビューを連ねる形で作られた映画『モンドヴィーノ』は、世界のワインビジネスがどうなっているのかを教えてくれるだけではなく、その背景にあるグローバリズムローカリズムの闘争と融合の具体的なあり様も見せてくれます。


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