拓海広志「『目を閉じて抱いて』に寄せて」
両性具有は完璧な人間の象徴です。洋の東西と時代を問わず、物語の中での両性具有者はその神秘性と越境性故に聖なる存在として描かれてきました。しかし、現実には多くの社会、時代において、半陰陽の人たちは何らかの差別を受けてきました。
内田春菊さんの『目を閉じて抱いて』は花房という魅力的な両性具有者をめぐる物語です。花房には精神において超越した人間が持つ達観があるのですが、同時に自らの身体性を完全には制御しきれないもどかしさもあり、作中ではそのギャップがうまく描かれています。
僕は内田さんの漫画の中ではこの作品が一番好きなのですが、男−女という古典的な物語を揺るがせながら、官能が読者の身体感覚に直接働きかけてくるところがその魅力です。
(無断での転載・引用はご遠慮ください)
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