拓海広志「『共同研究「冷戦以後」』に寄せて」
中曽根康弘、村上泰亮、佐藤誠三郎、西部邁氏の共著『共同研究「冷戦以後」』には、「伝統を保守するということは、慣習の中に堆積されている過去、現在、未来の間の集団的な平衡感覚を参照するということだ」という考え方が示されています。
そこに「他集団との関係」という前提を置くならば、これは僕の考え方と近くなります。 つまり、人間の集団はその歴史上で何度も他集団=異文化との接触を経験してきており、その都度「伝統」という<方法>を使って集団の心理的バランスを取ることをしてきたので、それが慣習化されているというわけです。
「伝統」という<方法>が集団の共同幻想を守る働きを果たした時に、それはあたかも歴史的な実体の如く認知されるようになります。そして、それを「伝統文化」とする共通の認識が集団内で確立していくことになるのでしょう。
こうしたことについての醒めた認識を持った上で、保守を唱えてきた中曽根康弘という政治家はやはり大きな存在なのだと思います。
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