拓海広志「『子どものアトピー診察室』に寄せて」 

 書店へ行くとアトピーについて書かれた本の種類の多さに驚かされることがあります。試みに頁をめくってみると、「これで必ず治る!」というふうに断定調で書かれた本の多くは言わば民間療法的な内容で、怪しそうなものも多い。


 でも、医師が書いたものの多くは、アトピーについて既にわかってきた知見をきちんと解説してくれてはいるものの、いささか学術的過ぎて、「要はどうすれば治るんだ?」ということを知りたい患者にとっては、ピンとこない内容のものが多いように感じます。


 こうした中で、アトピー発生のメカニズムがわかりやすく解説され、治療と日常でのケアのポイントなどが丁寧に紹介された、手軽に読めるものとして本書があります(ただし、本書ではアトピーの「アレルギー性疾患」としての面が重視されており、アトピー性皮膚炎のもう一つの要因である「皮膚の異常性」や、患者にとって不可欠となるスキンケアについてはあまり言及されていません)。


 三宅健氏は「痒いこと」「慢性的に経過すること」「アレルギーが背景にあること」という三つの特徴を症状の中に見出したときに、それを「アトピー」として診断すると言います。


 この基準に従えば、アトピー判定の難しい1歳未満の赤ちゃんの肌に生じた湿疹であっても、赤ちゃんが痒がっているかどうか、それが半年以上続く慢性的なものかどうか、両親や祖父母にアレルギーの既往歴があるかどうかといったことから、その症状がアトピーによるものなのかどうかの判断がつきやすいのだそうです。


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 拓海広志『アトピーのはなし』


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子どものアトピー診察室 (集英社新書)

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