拓海広志「『行とは何か』に寄せて」 

 本書に登場する小林栄茂師は比叡山千日回峰行を成し遂げられた方ですが、筆者である藤田庄市氏のインタビューに答えて「修行はすればするほど、悟りから遠くなります」と語っておられます。


 荒行によって肉体を酷使したあげくに見る幻覚や、陶酔状態の中で得た擬似的な神秘体験を悟りだと誤解する行者もいますから、小林師の言葉はそうしたことへの警告とも解することができるのですが、もしかしたら師はもっと深いことを言われているのかもしれません。


 個人的な行いである「行」が信仰とどうつながり、さらにそれが他者とどう関わっていくのか、そんなことを深く考えさせてくれる本です。


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行とは何か (新潮選書)

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