拓海広志「『山びとの動物誌』に寄せて」 

 宇江敏勝さんの数ある随筆集の中でも、僕が一番愛読しており、親しい友人のお子さんが読書適齢期になると送らせていただいているのがこの本です。


 宇江さんは熊野の山々を転々と移動しながら生活する炭焼きの子として生まれましたが、その後林業関係の様々な仕事に従事してこられました。そして、その傍らでたくさんの優れた随筆を書いてこられたのですが、本書は宇江さんが子供の頃から今日までに出会ってきた山の動物たちについて綴ったものです。


 本書における宇江さんの動物たちに対する厳しさと優しさの交じり合った視線は山びとならではのもので、素直な共感を覚えます。そして、かつて川で捕らえたズガニを家族で食べた夜に、まだ幼かった宇江さんの弟が急死し、それ以来宇江さんはズガニをいじめてきたという文章を読んだときには、僕は何故か無性に泣けました。


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山びとの動物誌―紀州・果無山脈の春秋 (宇江敏勝の本)

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