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拓海広志「『クジラは昔陸を歩いていた』に寄せて」 

『クジラは昔陸を歩いていた』の著者・大隅清治さんによると、クジラの起源は白亜紀末(約6500万年前)の古地中海南西部に注ぐ川の河口部に生息していたメソニックスと呼ばれる肉食性哺乳類にたどり着くそうです。 メソニックスはネズミ程度の大きさの動…

拓海広志「『日本海大海戦』に寄せて」

子供の頃に映画『日本海大海戦』を観て以来、東郷平八郎と言えば三船敏郎さん、乃木希典と言えば笠智衆さんの顔が浮かぶようになってしまったのは大問題です(笑)。 しかし換言するとそのくらい印象深い映画だったということで、僕は日本の戦争映画の中では…

拓海広志「『光の島』に寄せて」

過疎化の進行によって子供の数が激減した南の島・唄美島が漫画『光の島』の舞台です。 唄美島に住む老人は、島の小学校を維持するための員数合わせに、都会で暮らす息子夫婦の子供・光を島に呼び寄せます。 光は唄美島の自然や暮らしに深く魅せられる一方、…

拓海広志「『あざらし戦争』に寄せて」

動物を支配する「人間」、自然の力をも支配する「文明」というものを信奉してきた近代西欧文明が、その行き過ぎによる弊害に気付いた時に「エコロジー」という思想が生まれたのだとすれば、「自然保護」という発想もまたこの二項対立概念を前提にしなければ…

拓海広志「『初恋のアルバム』に寄せて」 

銭湯で働く守銭奴のような母親と、優しいだけで世の中を渡っていく力のない郵便局員の父親に失望していた娘が、両親の出逢いの地・済州島で二人の初恋時代にタイムスリップします。 漁村の美しい風景をバックに、娘役と若き日の母役を一人二役で演じ切ったチ…

拓海広志「『クジラの島の少女』に寄せて」 

高校時代に太平洋の島々に対する僕の思いを決定づけたのは、マオリ人の母、アイルランド人の父を持つ民族学者ピーター・バックの古典的名著『偉大なる航海者たち』でした。 僕はこの本を通してポリネシア人の文化について学び、マオリのルーツに対して思いを…

拓海広志「『ナマコの眼』に寄せて」

『ナマコの眼』はとても平易に書かれた、誰が読んでも楽しめる本ですが、本書には鶴見良行さんの思想や世界観が凝縮されています。 本書においてナマコとは直叙でもあり、隠喩でもあります。ここで語られているのは紛れもなくナマコの話なのですが、海底に横…

拓海広志「『星の航海術をもとめて』に寄せて」

航海術の基本は、「船の位置を求めること」と「船の向かう進路を求めること」という、空間認知にあります。まだ海図や航海計器のなかった時代の航海者たちの心には何らかのイメージマップがあり、彼らは天体、風、風浪とうねり、潮海流、海水の色、鳥や魚、…

拓海広志「『喜びも悲しみも幾歳月』に寄せて」

つい先ごろ、女島に残されていた日本最後の有人灯台がついに無人化されましたが、かつて灯台はそこで生活しながら灯りを守る灯台職員たちの不屈の努力によって保たれてきました。 灯台は往々にして辺鄙な岬の突端や崖の上、無人島などに位置していますので、…

拓海広志「『それから』に寄せて」

「風上に向かって少し斜めに切り上がろうとする時の帆船の帆が描くしなやかな曲線ほどセクシーなものはない」と、僕は思っています。 そこには自然に打ち負かされず、その力を利用して何事かを成し遂げようとする人間のしたたかな意志と、自然の懐に抱かれて…

拓海広志「『パイレーツ・オブ・カリビアン』に寄せて」

大人も子供も一緒になって底抜けに楽しめるエンターテーメント映画としてお薦め! ジョ二ー・デップが演じる伝説の海賊ジャック・スパロウは偉大な船長であり、海の男です。でも、口八丁手八丁の詐欺師的なところもあれば、怠惰でだらしないところもあるし、…

拓海広志「『シェエラザード』に寄せて」

太平洋戦争の結果として日本の商船隊が保有していた船は500トン以上のクラスで2,259隻が失われ、35,092人の船員の命が奪われました。支那事変からの8年間で見ると戦没船員の数は60,331人になります。 当時の日本人船員の死亡率は陸海軍人の死亡率を遥かに上…

拓海広志「『A Friend in Need』に寄せて」

サマセット・モームは僕の好きな作家の一人ですが、モームのショート・ストーリーを集めたペンギンのペーパーバック『Collected Short Stories』は午後のカフェで読むにはもってこいの本です。 この中に神戸の塩屋〜垂水界隈を舞台にした『A Friend in Need…

拓海広志「『永遠の語らい』に寄せて」

マノエル・ド・オリヴェイラ監督の『永遠の語らい』は、なんとも苦い後味の残る映画です。 ポルト、マルセイユ、ポンペイ、アテネ、イスタンブール、そしてカイロからスエズ運河を経てアデンへ・・・。歴史学教授の母と幼い娘による地中海の船旅は淡々と続き…