拓海広志「『あざらし戦争』に寄せて」

 動物を支配する「人間」、自然の力をも支配する「文明」というものを信奉してきた近代西欧文明が、その行き過ぎによる弊害に気付いた時に「エコロジー」という思想が生まれたのだとすれば、「自然保護」という発想もまたこの二項対立概念を前提にしなければ生じ得ないものだと言えるでしょう。


 ジャニス・へンケ女史は、自然から隔離された都市生活者が野生動物をペットのように擬人化して語るような自然保護運動は駄目だと語り、そうした人々の自然に対する無知と異文化に対する想像力の欠如が一部の自然保護団体の活動を支えているとして、その著書『あざらし戦争』の中で厳しく批判しています。


 彼女が言うように、そろそろもう少し冷静かつ現実的な環境論議ができる世の中にしていきたいものです。


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