拓海広志「『初恋のアルバム』に寄せて」 

 銭湯で働く守銭奴のような母親と、優しいだけで世の中を渡っていく力のない郵便局員の父親に失望していた娘が、両親の出逢いの地・済州島で二人の初恋時代にタイムスリップします。


 漁村の美しい風景をバックに、娘役と若き日の母役を一人二役で演じ切ったチョン・ドヨンの演技は見事です。特に純朴でコミカルだけど、どこかに深い憂いを秘めた若き日の母の姿には、胸をキュンと痛くさせられます。


 海女として生計を立てながら、その稼ぎで弟を学校に通わせる若き日の母は読み書きができません。郵便配達の合間を縫い、そんな彼女に読み書きを教えてくれたのが若き日の父です。そして、二人の間にほのかな恋心が芽生えます。


 若き日の両親の姿を見て二人への認識を改めた娘なのですが、現代の済州島に戻って再会した父は既に死期を迎えていました。母はその最期までも父を罵り続けますが、娘はそんな母の心の深い場所に父への愛情があることをもう知っています…。


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