拓海広志「『東京タワー−オカンとボクと、時々、オトン』に寄せて」

 リリー・フランキーさんの『東京タワー−オカンとボクと、時々、オトン』はとても心地よいリズムを持った文体の小説で、内容的にもかなり面白いです。リリーさんは僕と同世代の人なので小説の背景となった時代に対する感覚が似ており、僕はその分余計に感情移入ができました。まるでマザコン宣言みたいな本なのですが、とても共感できたのは、その時代感覚に通ずるものがあったことと、リリーさんの率直な表現に惹かれたからでしょう。


 リリーさんのお母さんは、女手一つで彼を育て上げた人だったようです。「マナーというのは、自分をよく見せるためのものではなくて、他人を嫌な思いにさせないためのもの。自分が恥をかかないためのものではなくて、他人に恥をかかせないためのもの」―これはリリーさんがお母さんから教わったことなのですが、僕はとても深い共感を覚えました。そこには、謙虚に、素直に、そして一生懸命生きてきた人に共通する矜持があるように思うのです。


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東京タワー ~オカンとボクと、時々、オトン~

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