拓海広志「『小泉の勝利 メディアの敗北』に寄せて」
『小泉の勝利 メディアの敗北』−事実がこの書名の通りであったことを国民の多くは認識していますが、それを真摯に検証しようというメディア側の作業はこれまでほとんど行われてきませんでした。そんな中で、自らの過去の記事を再掲し、何故自分が小泉政治を見誤ったのかを一つ一つ検証していく上杉隆さんの手法には、ジャーナリストとしての誠実な姿勢と高い志が見え、僕はとても好感を覚えました。
小泉純一郎前首相が決して政策通の政治家ではないこと、その発言に論理的矛盾の多いことなどは、取り立てて言うまでもなく大多数の国民が察知していたことです。しかし、政策通を自認する優秀な政治家や官僚、学者や評論家だけでは、当時多くの行き詰まりを見せていた日本という国のありようを変えることはできないことも人々は感じていました。
そんな状況下で国民は小泉氏の率直で正直な姿勢を好感を持って受け止め、氏の政治的な直感力と突破力に託してみようとしたのではないでしょうか。しかし、それを自らの経験知という枠組みの中でのみ分析するが故に誤読することの多かったメディアの方がむしろ取り残され、結果的に小泉流メディア戦術に利用される格好となったのが、あの時代だったのだろうと僕は思っています。
メディアが政治を批判・検証するためには、メディアは自らのあり方についても批判・検証すべきなのは言うまでもありませんが、これはメディア人にとっては難しい作業なのかも知れません。上杉さんの本はこれまでにも何冊か読んできましたが、本書を機に僕はこのジャーナリストに注目していきたいと思いました。
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