拓海広志「劇団鹿殺し」

 以前西宮をベースに関西で活躍していた劇団鹿殺しも、2年前に東京にベースを移して以来、徐々に全国区へと成長を遂げてきました。そんな彼らが神戸新開地の小劇場で『僕を愛ちて。』という芝居をやるというので、観てきました。


 亡くなった母への追慕と父へのエディプス的葛藤を抱えて生きているニートの若者と、かつて彼に助けられたお礼にと恩返しをする丹頂鶴。胎内回帰的とも言える無意識の願望を持つ彼は、自力で飛び立つことが出来るのか・・・?


 鹿殺しは特別に演技が上手い劇団というわけではないのですが、その舞台には一人一人の役者の身体から発せられる真摯で熱烈なパワーが満ち溢れています。これは小手先の器用さよりも、ずっと重要なことでしょう。


 観客の多くはそれに魅せられて、劇団鹿殺しの芝居を観に劇場へ足を運ぶのですが、このパワーを持続させながらさらに洗練度を高めていければ、この劇団はこれからどんどん成長していくのではないでしょうか。今後がとても楽しみな、注目株の劇団です。


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