Life

拓海広志「『一千一秒物語』に寄せて」

数あるタルホ作品の中でも、僕が一番好きなのは掌編小説集『一千一秒物語』です。ウィスキーを片手にこの本を読み、かつての神戸の夜を、あるいはプラハやエジンバラ、ダブリンあたりの街角を思いつつ、宇宙を幻視するのは至福の一時です。 そう言えば、『ス…

拓海広志「『モンドヴィーノ』に寄せて」

ワインの文化と歴史はヨーロッパの風土や思想、そして人々の生活と深く関わっていて、それらについて知ることはとても面白いですね。また、休日にフランスの地方を巡って小さなワイナリーやビストロを訪ね、野趣あふれる田舎料理を食べながらそこの地ワイン…

拓海広志「『死生観の誕生』に寄せて」

日本語の「自然」には「ジネン」「シゼン」という二通りの読みがありますが、中世において前者は「自ずからそのようにあらしめること」(必然)を意味し、後者は「まさかのこと」「万一のこと」(偶然)を意味していたと言います。 中世日本の「ジネン」思想…

拓海広志「メリー・クリスマス!」

「メリー・クリスマス!」−−−12月に入ると欧米人と会ったり、電話で会話をした後の、お別れの挨拶に必ずこの言葉が加わりますね。 今年の日本の秋は妙に生暖かく、クリスマスなんて来ないような気がしていたのですが、最近ようやく少し涼しくなってきたの…

拓海広志「続・堕落論」

もし「現在」というものに真っ向から対峙したいと思うのならば、僕たちにはたぶん健康な精神が必要になるだろう。 でも、健康な精神とはいったい何なのか? 僕は、そこにデカダンスとニヒリズムをはらみつつ、それらを克服してきた精神に対して健康さを感じ…

拓海広志「テロに対するプリンシプル」

数年前に、僕の当時の上司でもあり、個人的に親しい友人でもあった英国人の男がバリ島を襲った爆弾テロで亡くなりました。その時に抱いた激しい怒りと深い悲しみは今でも僕の胸中にありますが、その後も世界各地で大小様々な規模の理不尽な無差別テロ事件が…

拓海広志「子どもたちの生命と魂」

自分の子どもを虐待する人は、かつて自分自身が親から虐待されて育った体験を持つケースが多いと言われています。僕は人の心の問題を全てそういう「物語」にはめ込んで安易に理解したつもりになるのは危険だと思いますが、人間の対人関係の基本が子どもの頃…