拓海広志「『キャプテンの責務』に寄せて・・・」

 2009年にソマリア沖で海賊にシージャックされた「マースク・アラバマ」のリチャード・フィリップス船長の手記。本船の出航前から事件に至るまで、また事件後に自身が救命艇に乗せられて海賊に拉致され、米国海軍に救出されるまでの一部始終が詳細に綴られている。ソマリアの海賊問題の深刻さとその背後で暗躍する人たちの存在を再認識させられると共に、著者が船員養成学校の頃から身につけてきた「船乗り魂」と「キャプテンの責務」意識に対して、僕は海の仲間として強い共感を覚えた。


 キャプテン・フィリップス曰く、「船乗りとはもともと長いものに巻かれる性格ではなく、”放浪”と”反抗”とは切っても切れない関係にある」、「船乗りというのは、きっと”船乗り”という人種なのだろう」、「私たちははみ出し者であり、背教者であり、一流の船乗りなのだ」。船長は「溺れ死ぬ危険を加えた牢獄」(マーク・トウェイン)たる航海に出るとき、そんな個性溢れる船乗りたちをまとめ上げて規律正しく船の安全運航を行わねばならない。そんな「キャプテンの責務」について、改めて考えさせらた。


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