拓海広志「旅の心」

 長年にわたって世界と日本の各地を巡りながら旅暮らしを続けてきた僕だが、ここ2年ほどは旅の機会がかなり減っている。しかし、それは物理的な移動という意味での話であり、心理的なことで言うと僕は今でも日々旅を続けているのだと思う。


 旅の心とは、日々の暮らしや風景、交友関係の中に、変化の兆しや非日常の気配を含む様々な発見をし、そうした出会いと別れを愉しみ、そして慈しむものだと、僕は思う。物理的な移動をしていても、そういう心がなければ旅は成立しないし、逆に物理的な移動を伴わなくても、心で旅をすることは可能だ。


 昨年幾つかの大学で授業をする機会があったが、そうした中でも素敵な出会いがたくさんあった。何人かの学生とはその後も交流が続いているが、「旅」に憧れる学生の1人が僕の話を聞きに来てくれるので、僕は彼とはいつもそんな話をしている。僕にとっては、彼との出会いもまた、貴重な旅での出来事なのだと思う。


 ところで、西宮での僕のジョギングコースは、甲山〜北山にかけての山道だ。これは言わば近所の散歩道なのだが、そんなところでも様々な動物や鳥、虫や魚、爬虫類、植物との出会いがある。今日もアカゲラが木を突くさまや、仁川上流の河原を飛ぶカワセミのさまなどを眺めながら、僕はささやかな旅をした。


 こうした小さな旅の中での出会いと別れは、きっと今年もたくさんあるのだろう。その一つ一つを大切にして、日々を送りたいと思う。。。


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