拓海広志「シアバター石鹸プロジェクト」

 旧友の森重裕子さんが、「eco japan cup 2009」の環境ビジネスベンチャーオープンにて「環境ビジネスウィメン賞」を受賞しましたので、紹介させていただきます。


 保健衛生を専門とする森重さんは、長年西アフリカのブルキナファソに滞在して「エイズ予防と啓発」の仕事に従事してきました。世界最貧国の一つであると共に、砂漠化と森林消失が急速に進む同国では、貧困故に売春を行い、その結果としてエイズに罹る女性が少なくないのですが、エイズに罹ると社会から差別をされるため、仕事に就きにくくなり、さらに貧困に陥るという悪循環が同国にはあります。


 ブルキナファソと言えば、シアの木が自生する地域として知られていますが、シアの木の成長は遅く、シアバターの原料となる実がなるまでには15年以上かかると言われています。同国の「住民森林管理組織」は森林の保全を図るため、環境省及び日本のJICAの支援を受けながら活動していますが、その一つがシアバターの生産で、収益金は作業に携わる女性たちの収入になる他、組織の運営と森林の保全に用いられています。


 また、エイズや貧困に苦しむ女性たちを支援する「エイズ対策市民組織の石鹸研修所」では、こうして作られたシアバターを原料とし、エイズや貧困に苦しむ女性たちが石鹸を作り、地域で販売しています。森重さんはこの活動に目をつけ、日本への輸出・販売を行う、本格的な石鹸事業を開始することにしました。「釜炊き製法50年」で知られる兵庫県三木市の老舗石鹸メーカー「丸菱石鹸」の技術指導、輸入業務、検査・最終仕上といった支援を受けることで、高い品質を保証できるようになったと言います。


 一過性の慈善事業に終わらせるのではなく、持続的な収益事業として成長させることで、森林保全、エイズ対策、貧困撲滅などのブルキナファソが抱える課題に対し、安定的に貢献できる事業とすることが森重さんの目標で、彼女はこの事業のために「ア・ダンセ」という会社を9月に設立しました。僕は森重さんが2年近く前に事業構想を抱いた頃から相談に乗ったりしてきたのですが、彼女の真っ直ぐで大らかな人柄と熱意のおかげで多くの人たちの協力が得られ、事業が順調に始まりつつあることと、その事業が「eco japan cup 2009」で表彰されたことに対し、心からお祝いを申し上げたいと思います。


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