拓海広志「写真展『熊野修験』のお知らせ」
6月17日から30日にかけて、東京都墨田区吾妻橋のギャラリー・アビアント(都営浅草線本所吾妻橋駅より徒歩5分)で森武史さんの写真展『熊野修験』が開催されています。ご興味のある方は是非足を運んでみてください。
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学生時代から熊野の海・山・川に魅せられ、紀南各地を巡ってきた僕なので、当然のことながら中辺路や小辺路といった熊野古道をはじめ、熊野の山道は30年ほど前からよく歩いていました。熊野を代表する山の作家・宇江敏勝さんと巡り会ったのもそうした山行の途上でのことで、その時に宇江さん宅でご馳走になった茶粥の美味しさは今でも鮮明に記憶に残っています。その後も宇江さんとの交流は続いていますが、宇江さんが後年『熊野修験の森』という本をお書きになったのも、何かのご縁なのだと感じます。
熊野の文化や自然のことを知るにつれ、僕が関心を持つようになったことの一つが修験道でした。熊野で修験が盛んだった頃は、那智・速玉・本宮の熊野三山から玉置山、行仙岳、持経宿、前鬼山、大日岳、深仙宿、釈迦ヶ岳、八経ヶ岳、弥山、行者還、普賢岳、山上岳、金峯神社、吉野山を経て柳の宿に至る大峯奥駈道(南から北へ向かうのが本山派(天台系の聖護院が主導)による順峯、北から南へ向かうのが当山派(真言系の醍醐寺三宝院が主導)による逆峯)を踏破して修行する行者は大勢いたそうです。しかし、時代の流れの中で熊野の修験は寂れ、吉野の行者たちも前鬼までしか来なくなったために、南奥駈道(前鬼の太古の辻以南)は廃れてしまいました。
そして、今から20年ほど前に訪ねた那智山青岸渡寺で、僕が偶然出会ったのが副住職の高木亮英さんです。亮英さんは熊野の修験を復興して、人々に大自然の中で心身を鍛え清める場を提供したいという志を持つ方で、その夜僕は亮英さん宅に泊めていただき、修験に関する様々な話をうかがいました。中でも僕が感心したのは、地元の登山家の会「新宮山彦ぐるーぷ」が南奥駈道の整備や行仙岳の山小屋建設などに尽力することで、亮英さんの志を支えようとしているという話でした。登山家と修験者が一緒になって活動を行うなどというのは珍しいことで、僕はそこにとても爽やかなものを感じたのです。
かくて、一宿一飯の恩義もあり、僕は青岸渡寺が主宰する「熊野修験団」の立ち上げメンバーの1人として、亮英さんに従って大峯奥駈道を歩くようになりました。この山行は本当に素晴らしく、僕にとっては修験を通して熊野の文化や自然をさらに深く知る機会となりました。また、亮英さんの人柄を慕って各地から多くの人が参加するようになり、そうした人たちとの出会いも奥駈修行の楽しみの一つでした。やがて僕は海外での生活が主となっていったため、奥駈修行にはほとんど参加できなくなったのですが、僕が参加した立ち上げ当初は6〜7人ほどの少人数で細々と歩いていたのが、今では100人を軽く超す大集団での行軍へと化しているそうですから、これも亮英さん及び関係者のご努力の賜物なのでしょう。また、機会があれば奥駈道を歩いてみたいものです・・・。
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