拓海広志「久しぶりの『海王丸』」
航海訓練所の練習帆船「海王丸」が横浜港に入港したので、翻訳家の加藤晃生さんらと共に訪問してきました。現在の船長はアルバトロス・クラブのメンバーでもある国枝佳明さんですが、国枝さんは僕が「海王丸」の僚船「日本丸」に訓練生として乗っていた頃に三等航海士を務めていた方です。僕よりもほんの少し年上の先輩が練習帆船の船長をされているということに、今さらながら歳月が過ぎ去るスピードの早さを感じました。何しろ、学生時代の僕たちにとって、船長は雲の上の存在でしたから・・・。
船長公室の国枝さんを訪ねると、写真家の氏家弘二さんが僕らを待っていました。実は、氏家さん、国枝さん、加藤さん、そして僕の4人はハワイのカヌー「ホクレア」つながりなのです。氏家さんは2007年に行われた「ホクレア」のハワイ〜日本航海の撮影を担当された方です。また、「海王丸」は以前から「ホクレア」に航海のアドバイスを行ってきた関係で、国枝さんも「ホクレア」のキャプテンであるナイノア・トンプソンと親交があります。そして、加藤さんは「ホクレア」のハワイ〜日本航海のサポーターとして多大な貢献をした方で、「ホクレア」の横浜寄港を記念して大さん橋ホールで行われた「シンポジウム『ホクレア号に学ぶ』」でも司会を務められました。ちなみに、このシンポジウムには、古い友人の石川直樹さんらと共に、僕もシンポジストとして参加させていただきました。
「海王丸」の船長公室では、「ホクレア」をめぐる話や、かつての「日本丸」航海の四方山話(下記の『日本丸航海記』参照。Kサードオフィファーとして登場されているのが国枝さん。当時の船長は大杉勇さん、機関長は砂川武朗さんで、お二人ともアルバトロス・クラブのメンバーです)などで大いに盛り上がりました。また、氏家さんは熊野にも多大な興味を持っておられ、若い頃からずっと熊野の海・山・河を巡ってきた僕と意気投合したりもしました。こういう出会いは偶然の中にも必然が潜んでいるので、実に愉しいものです。
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練習帆船は他国では海軍やコーストガードを目指す若者の訓練用とされていることが多いのですが、日本では伝統的に商船乗りを目指す学生たちの訓練に用いられてきました。帆船での訓練は汽船や機船での訓練よりも海の自然や気象、海象、海の生物の生態、船の構造や性質、そして船内での仕事や生活を行う際のチームワークについてかなり敏感にならざるをえません。また、帆船は天文航法の訓練にも最適なので、様々な面でシーマンシップを身につけるには大きな効果があります。僕自身も帆船で半年間の訓練を受けたことで学んだことは数多く、それがその後の僕と海の付き合い方を決定付けたと言っても過言ではないでしょう。久しぶりに訪ねた「海王丸」のデッキを歩きながら、僕は自分の原点を見つめなおしていたのです・・・。
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「氏家弘二さんのブログ」
拓海広志「イメージの力で海を渡る」
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