拓海広志「『Facing Future』に寄せて」

 八丈島の海で早朝から夕方まで、独りでひたすら泳ぎ込んだ。その爽快な疲労を森の温泉で癒した後、ぶらりと立ち寄ったカフェは古民家の広間を利用して営まれており、素朴で自然と調和したたたずまいが居心地良い。畳に座って庭の木々の緑を眺めながらコーヒーを飲んでいると、店の奥から微かに流れてくる音楽があった。IZである。


 IZの音楽はこれまでにも聴いていたが、このときほど自然に自分の身体に沁み込んできたことはなかった。海と森のあわいから湧き上がったような優しい調べは、太平洋を越えてハワイと八丈島を結んでいるかのようだ。僕は時の経つのを忘れ、その素敵なカフェにすっかり長居をしてしまった。


 このCDのジャケット写真は森と海のつながりを暗示していて僕は個人的に好きだが、それ以上に内容がとても豊かで、IZを初めて聴く人に僕がお薦めしたい一枚だ。たぶん人によっては好き嫌いがあるだろうが、幾つかのアメリカン・ポップスの名曲がIZによって新しい息吹を吹き込まれていることにも僕は感銘を受けた。


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Facing Future

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