拓海広志「『ナツコ 沖縄密貿易の女王』に寄せて」
太平洋戦争前後の動乱期に、沖縄、八重山、フィリピン、台湾、香港、そして神戸を結ぶ海を駆け巡って生きた女性ナツコの物語です。
ナツコと同時代を生きた人には大浦太郎、照屋敏子といった著名人もいますが、僕は本書を読んで初めてナツコが沖縄の人々の心に残したものの大きさを理解しました。
国境を気にすることなく大海を渡って密貿易を行った、潮気あふれる海人そのものとも言えるナツコの爽快で清々しい生き様。しかし、その裏側に垣間見える母親としての苦悩。そして病との闘い…。
決して「生き急ぎ」という言葉で片付けたくはないのですが、彗星のように時代を駆け抜けた彼女の人生には眩暈を伴うスピード感があります。
本書はナツコの人生に仮託して沖縄の戦後史の一こまを描いたものですが、かなり読み応えがあります。
(無断での転載・引用はご遠慮ください)
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