拓海広志「『ガイア−母なる地球』に寄せて」

 『ガイア−母なる地球』はデイヴィッド・ブリン氏の小説ですが、同氏のロマン主義的自然保護イデオロギーに対する批判には僕も共鳴できる点があります。


 ブリン氏の思想の根底にあるのは、もともと人間という生物は自然環境に対して何らかの影響を与えることを宿命づけられており、それは古代から現代に至るまで何ら変わりはないという見方です。


 つまり、近代は圧倒的な技術の進歩と人口の増大によって自然に与える影響の度合いを大幅に増したが、それは量的に量れる変化であり、近代において人間と自然の関係性が質的にそれほど大きく変化したのではないというわけです。


 僕はこの考え方に対して必ずしも全面賛同するわけではないのですが、そこからは牧歌的な近代批判を退け、人間と自然との関係性をもっと巨視的に見通そうというブリン氏の意志を感じ取ることができます。


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 拓海広志『信天翁ノート(2)』


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