拓海広志「『美しい星』に寄せて」
文化概念としての天皇を重視していた三島由紀夫氏は、たとえそれが幻想であっても、天皇を伝統的に確立された文化として中心に据えておかねば、日本というアイデンティティが成り立たなくなるという危機感を抱いていた人でしょう。
『美しい星』は三島氏にしては軽いタッチの大衆小説といった趣きの作品ですが、そこに描かれている「社会(世界)への違和」と「自己の身体への違和」という二重の違和感に圧殺されかかった家族が、実は自分たちは宇宙人なのだという確信を抱き、宇宙に救いを求めるさまは象徴的です。
宇宙人とは現代における他者=異人とも言える存在であり、我々が「地球人」というアイデンティティを確立する際には彼らの力が必要なのかも知れません。国家や天皇、文化について語った三島氏が見つめていたものを探る上で、ちょっとしたヒントが見つかる小説です。
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拓海広志『信天翁ノート(3)』
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- 作者: 三島由紀夫
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