拓海広志「『海と大陸』に寄せて・・・」

 久しぶりに神保町の岩波ホールに足を運び、『海と大陸』という題のイタリア映画を観てきた。地中海に浮かぶ人口450人、面積5.45平方キロメートルの小島リノーサを舞台とした作品だ。島で代々漁業を営んできたプチッロ一家だが、海を漂流し遭難しかかっていたアフリカ難民の母子を救助して家にかくまったことから、様々な波乱に巻き込まれていくことになる。ちなみに、難民の母親の名はサラ。地中海においてロマ族の信仰を集める渡海聖女と同じ名だ。


 プチッロ一家は警察から睨まれることになり、様々な葛藤を抱きながら難民母子と接していくが、最後には彼女たちを逃がすために行動に出る。「海で溺れている者は助ける。それが海の掟だ」という祖父の言葉に漁師としての気概を感じていた孫のフィリッポは、その言葉を本当に実行することの困難と苦悩、そして挫折を味わう。しかし、最後には自らの船に彼女たちを乗せて島を出て行くのだった。彼の船が進む海はどこまでも碧く、溢れる陽光に包まれていた・・・。


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 『海と大陸』公式サイト


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