拓海広志「『墓場鬼太郎』に寄せて」

 僕は昔から水木しげるさんの作品群の大ファンなのですが、貸本まんが時代の幻の名作『墓場鬼太郎』を初めて読んだときの不気味さと爽快さの同居した独特の感覚は、今でも忘れられません。


 そこには『ゲゲゲの鬼太郎』に見られる人間贔屓のお人好しな鬼太郎はおらず、もっと妖怪らしい禍々しさを持ちながら、同時に人間臭い行動も取ったりする、実に魅力的な鬼太郎、目玉おやじネズミ男がいます。


 しかし、驚かされるのは後年の『ゲゲゲの鬼太郎』の基本的なコンセプトやストーリー仕立てが『墓場鬼太郎』において既に出来上がっていたことで、鬼太郎に対する水木さんの思い入れの深さを感じます。


 復刻版が文庫化されたことで本書はより多くの人に読まれることになるのでしょうが、『ゲゲゲの鬼太郎』しか知らない今の子どもたちにも鬼太郎という存在の深みが伝えられるのでいいですね。


(無断での転載・引用はご遠慮ください)


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墓場鬼太郎 (1) (角川文庫―貸本まんが復刻版 (み18-7))

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墓場鬼太郎 (2) 貸本まんが復刻版 (角川文庫)

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墓場鬼太郎 (3) (角川文庫―貸本まんが復刻版 (み18-9))

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墓場鬼太郎 (4) (角川文庫―貸本まんが復刻版 (み18-10))

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墓場鬼太郎 (5) (角川文庫―貸本まんが復刻版 (み18-11))

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墓場鬼太郎 6 (角川文庫 み 18-12)

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