拓海広志「『舟と港のある風景』に寄せて」
往年の名雑誌『あるく みる きく』の編集・執筆者として知られる森本孝さんが、かつて同誌などに書いた日本各地の漁村をめぐる紀行文が一冊の本にまとめられました。
海の厳しい自然と対峙しながらも、それと共生していくことを当然のこととする海人たちは、幾世代にもわたって故郷の海を里海として育ててきました。本書を読んでいると、そうした海人たちの暮らしの息遣いが伝わってくるようです。
海で生きる人たちに対する深い愛情と敬意が根底にありながら、過度に感情移入することを避けた森本さんの文体はとても心地よく、僕は本書を開いた途端にぐいぐい引き込まれて、一気に最後まで読み切ってしまいました。
「歩きながら考える」という森本さんのスタイルは宮本常一さんや鶴見良行さんの流儀とも通じており、僕自身もそうありたいと思っていますので、本書には大いに啓発されました。
(無断での転載・引用はご遠慮ください)
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