拓海広志「『山の郵便配達』に寄せて」

「久しぶりに美しい映画を観たな〜」という思いに浸れた作品の一つです。


 中国湖南省西部の山岳地帯で、生涯を掛けて郵便配達の仕事を勤め上げた男が、その役目を息子に譲ることにし、共に最後の配達の旅に出ます(2泊3日にわたるそれは「旅」と呼ぶべきでしょう)。


 息子は子供の頃から仕事のために留守が多く寡黙だった父とは距離を取っていたのですが、この旅を通して父への尊敬の念を固め、同時に仕事への責任感を持つようになります。


 映画のストーリー自体はとてもシンプルなのですが、急速な近代化と国際化の中で様々な矛盾に直面している中国の人々にとって、この映像が訴えかけるものは少なくないだろうと思います。


 桃源郷を思わせる苗族の山村の映像は夢のように美しく、それだけでも観る価値があります。


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